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野生下でのデグーの暮らしは?南米チリでのデグーの生態とコミュニケーション

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  野生のデグーは南米チリ中央部の半乾燥した草原や低木地帯(チリ・マトラール)に群れで暮らしています。中央チリでは標高500~1200メートルほどの地域が好まれ、雨は少ない冬と比較的多い夏という地中海性気候の中で生活します。こうした環境では昼間は日差しが強く気温が上がるため、デグーたちは涼しい朝夕に活発に活動し、暑い正午には巣穴に戻って休息するなどの工夫をしています。生息地の植物はイネ科の草本や小さな低木が主で、デグーはこれらを食べて生活しています。また、デグーはチリ国内では 28°S~34°S の範囲に限られており、近縁種に比べてずっと大きいテリトリーで暮らしています。 社会性と群れでの生活 デグーは非常に社会性の高い動物で、仲間と群れを作って生活します。通常は 2~10 頭(平均約 3 頭程度)でひとつの群れを作り、オスとメスが混ざった構成や、メスのみの群れなど多様な組み合わせが見られます。群れのなかでは順位ができ、優位なオス・メスが繁殖権を持ちますが、お互い協力して生活する姿も特徴的です。例えば、同じ群れのメスたちは共同で子育てを行い、自分の子だけでなく仲間の子まで世話する( 共育て ・ 相互授乳 )習性があります​。稀に、同じ土壌に住む別種の齧歯類(チンチラモルモットの一種)を自分たちの子と同じように育てることも観察されています。こうした協力的な子育ては「群れ単位の繁殖」と呼ばれ、野外での研究でも確認されています。 デグーは日中に仲間と一緒に広い範囲を移動して食べ物を探しますが、群れが大きいほど個々の警戒負担は減るため、多頭での生活は 安全確保 にも役立ちます。グループで行動すると外敵の早期発見率が上がり、個体はより多くの時間を採食に充てられるようになります。実際にEbenspergerらの研究では、群れにいるときの警戒時間が減り、外敵検知能力が高まることが示されています​。 コミュニケーション手段 デグーは仲間同士で声や匂い、視覚情報を駆使してコミュニケーションします。音声によるコミュニケーションは特に発達しており、 15種類以上 もの鳴き声が確認されています。鳴き声の種類については、以前こちらの記事で解説しましたのでぜひ参考ください。 デグーの15種類の鳴き声と本当の気持ち【完全ガイド】 例えば子デグーが母親に甘える高周波音や、仲間への...

デグーの15種類の鳴き声と本当の気持ち【完全ガイド】

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デグーは非常に社交的な齧歯類で、さまざまな鳴き声で仲間とコミュニケーションを取ります。研究によれば、デグーは 最大で15種類 もの異なる声を使い分けることがわかっています​。これらは「Whine(すすり泣き)」「Groan(うなり声)」といった英語で分類されていますが、以下ではわかりやすい日本語の擬音語とともに、状況や感情を解説します。 デグーの鳴き声の種類 Whine(すすり泣き声) Groan(うなり声) Chaff(からかい声) Warble(甘えたさえずり声) Chirp(チューチューと短く鳴く声) Chitter(さえずり声) Wheep(警戒・驚きの高い鳴き声) Squeal(キーキーと大声で鳴く声) Pip(小さく短い不満音) Grunt(低いブーブー音) Bark(吠えるような声) Tweet(やさしいさえずり声) Trill(母性を示す震える声) Loud Whistle(大きな口笛状の鳴き声) Low Whistle(小さな口笛状の鳴き声) 以下、それぞれの鳴き声について、日本語の擬音語とともに詳しく説明します。 Whine(すすり泣き声)~「キューキュー、クークー」 Whine は「キューキュー」「クークー」といった、やや甘えた引き伸ばした声です​。口を少し開いて鳴くことが多く、仲間との物理的な距離が離れたときや餌の争いの場面でしばしば使われます。この声の意味は「警告・不快の表現」であり、相手を「これ以上来ないで」「不満だ」という軽い警告のサインです。英語の「whine」は嘆くような意味合いですが、日本語では「キューキュー」と聞こえる高い鳴き声と表現します。 Groan(うなり声)~「ウーッ、キュー」 Groan は「ウーッ」や「キュー」といった、やや低く不機嫌そうな声です。しばしば口を大きく開けて、耳を後ろに引いて鳴きます。仲間と争いごとが起こるときや一触即発の場面で聞かれ、Whine のあとによく続いて出現します。意味は「強い警告・威嚇」で、相手に「本気で怒っているぞ」「これ以上近づくと攻撃するぞ」と伝える効果があります。 Chaff(からかい声)~「チッチッキッキッ」 Chaff は「チッチッキッキッ」と、小刻みでこもった音...

【ケース別】脱毛症状が見られるデグーに考えられる病気と、環境改善について

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デグーは体調が良いと活発に回し車を回しますが、急に脱毛症状が出ると飼い主さんは心配になりますね。実は、デグーの脱毛にはさまざまな原因が考えられ、環境や病気の両面から対策する必要があります。ここでは、 皮膚の病気(真菌症、寄生虫、皮膚炎など) や 歯科疾患・内分泌疾患 などの病気、 ストレスや温度・湿度管理、栄養不足 などの環境要因を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。そして、それぞれに対する具体的な 改善方法や予防策 も詳しく紹介します。症状が続く場合や全身に広がる場合、早めに動物病院へ相談する目安も記載していますので、デグーの健康管理にぜひお役立てください。 脱毛の主な原因(病気編) 皮膚糸状菌症(真菌感染) デグーの脱毛でよく見られるのが 皮膚糸状菌症 です。真菌(カビ)の一種が皮膚や被毛に感染し、円形や不規則に毛が抜けてしまいます。主な症状は 円形脱毛 や フケ で、脱毛部位の皮膚が白っぽく粉を吹いたり、赤くなることがあります​。真菌は湿度や温度が高い環境で繁殖しやすいため、日本の高温多湿な気候では注意が必要です。例えば砂浴び場を清潔に保たなかったり、飼育ケージが蒸れやすいと発症しやすくなります。 改善策(真菌症の場合) :まずは早めに動物病院で 真菌培養検査 を受け、原因菌を特定します。治療には 抗真菌薬 (一般的にイトラコナゾールやケトコナゾールなどの飲み薬・塗り薬)が用いられます。また、ケージ内の環境を清潔に保ち、砂浴び場はこまめに新しい砂に交換しましょう。換気を良くして湿度を下げることも大切です。治療期間は数週間~1か月以上かかる場合がありますので、獣医師の指示に従って根気よく続けましょう。 外部寄生虫(ノミ・ダニなど) ノミやダニ などの外部寄生虫感染も脱毛の原因になります。ノミが皮膚に寄生すると激しい痒みを引き起こし、患部をかきむしって毛が抜けたり皮膚炎になることがあります。また、身体に寄生しない場合でも、他のペット(猫・犬など)から寄生虫が持ち込まれてデグーに感染する場合があります。寄生虫が原因の場合、皮膚に小さな斑点状の脱毛や赤みが現れることが多く、しばしば激しい掻痒(かゆみ)が伴います。 改善策(寄生虫の場合) :毎日の観察で被毛にフケ状の抜け毛や黒い汚れ(ノミの糞)がないかチェックします。寄生虫が疑われる場合は、 獣医師...

【解説】デグーと糖尿病:リスク要因と初期症状を見逃さないための毎日の観察ポイント

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デグーはもともと血糖値を調整するホルモン(インスリン)の働きが弱く、高糖質の食事や肥満により2型糖尿病を発症しやすい体質です​​。特にキャロットや果物など糖質の多い餌を与えると、急激に血糖値が上昇して糖尿病のリスクが高まります​。そのため、デグーでは日頃から食事管理や運動習慣に注意し、早期に体調の変化に気づくことが重要です。 糖尿病のリスク要因 デグーが糖尿病になる主な要因には、 食生活・栄養管理 と 生活習慣 が深く関わります。野生下のデグーは繊維質中心の植物を食べており、人間が与えるペレットや野菜・果物に含まれる糖質には非常に敏感です​。特にパッケージフードやおやつ類に甘い野菜・果物が混ざっていると、短期間で肥満や高血糖を招きやすくなります​。また、年齢や遺伝的な体質も無視できません​。若齢では体質の違いから糖代謝の能力に差があり、ウイルス感染(サイトメガロウイルスなど)が原因で膵臓のインスリン分泌が低下するケースも報告されています​。 十分な 運動環境 を整えることも重要です​。ケージは広めにし、回し車や登り木など遊具を用意して毎日運動させてあげましょう。デグーは活発に動く動物で、運動不足になると肥満が進みやすく、それが糖尿病の発症リスクを高めます​。逆に適度な運動は血糖値の管理にも役立ちます​。さらに、 ストレス を減らし安定した飼育環境を保つことも健康維持には大切です​。以上のように、糖質コントロールされたバランスの良い食事と十分な運動・体重管理が、デグーの糖尿病予防につながります​。 糖尿病の初期症状と早期サイン デグーの糖尿病は初期症状がわかりにくいこともありますが、下記のような変化が見られたら注意が必要です。特に 多飲・多尿 、 体重・食欲の変化 、 活動量の低下 、 被毛の状態悪化 などが代表的なサインです​。以下に主な症状を挙げます。 多飲・多尿 :異常に水を飲む量が増え、1日で給水ボトルが空になるなど 飲水量の増加 や、 排尿量・回数の増加 が見られます​​ g 。ケージ内の床材がいつもより湿っていたり、おしっこ跡が増えていないか注意しましょう。 体重・食欲の変化 :初期には糖質でよく食べて太りやすくなりますが、病気が進むと 食欲が落ちて体重が減少 することがあります​。急に餌を残したり、ふだんの体重と比べて減少傾向...

高齢期のデグーの食事について

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今日は、高齢デグーにおけるチモシー(牧草)の選び方と与え方のポイントをご紹介します。要点としては、①高品質な草(チモシーまたはメドーヘイ)を常時無制限に供給すること、②繊維質の多い「セカンドカット/サードカット」を選ぶこと、③デグー専用のシニア向け製品はほとんどないため、ウサギ用のシニア向けチモシーを参考にするなど工夫すること、④色や質(緑色やカビ)は避け、茶褐色で香りの良いものを選ぶこと、⑤体調・歯の状態や体重変化を獣医師と相談しながら与えること――が挙げられます。 高齢デグーの栄養的背景 ライフステージと必要な牧草量 デグーは本来の寿命が6~8年程度と言われ、高齢期(シニア期)は5歳前後から始まると考えられます。高齢期も含め、食事の70%以上を草(チモシーなど)でまかなう必要があります。 繊維質豊富な牧草は消化管の健康を支え、歯を適切に擦り減らす役割も果たします。 糖分過多・たんぱく質過多のリスク デグーは糖尿病にかかりやすく、アルファルファ(ルーサン)ヘイはたんぱく質・カルシウムが多いため、チモシーを主体にすることが推奨されています。 チモシーの切り方(カット)とシニア向けの工夫 カット別の特徴 ファーストカット(Coarse/First) :茎が太く硬めで繊維質は多いが、口当たりは硬め。 セカンドカット(Medium/Second) :茎と葉のバランスが良く、たんぱく質・繊維の中間的な特性。 サードカット(Soft/Third) :葉が多く柔らかめで高齢個体や歯の伸びすぎで硬いものが苦手な子向き。 シニア向けウサギ用チモシーの参考例 ウサギ用の「シニア用チモシー配合飼料」は、消化器ケア・筋肉維持のために高繊維、適度な蛋白質、抗酸化成分を配合した製品があります。 こうした製品をデグーにそのまま与えることは避けますが、配合バランスのヒントとしてセカンド/サードカット主体のものを選ぶのは有効です。 デグー向けチモシー選びのコツ 色・匂い・保管状態 良質なチモシーは茶褐色で、青々しすぎる(緑色)は若葉過多で消化不良を招く恐れがあるため避けます。 ピンクや白の斑点はカビの兆候なので廃棄し、乾燥した風通しの良い場所で保管することが重要です。 風味・バラエティの提供 同じ...