【ケース別】脱毛症状が見られるデグーに考えられる病気と、環境改善について



デグーは体調が良いと活発に回し車を回しますが、急に脱毛症状が出ると飼い主さんは心配になりますね。実は、デグーの脱毛にはさまざまな原因が考えられ、環境や病気の両面から対策する必要があります。ここでは、皮膚の病気(真菌症、寄生虫、皮膚炎など)歯科疾患・内分泌疾患などの病気、ストレスや温度・湿度管理、栄養不足などの環境要因を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。そして、それぞれに対する具体的な改善方法や予防策も詳しく紹介します。症状が続く場合や全身に広がる場合、早めに動物病院へ相談する目安も記載していますので、デグーの健康管理にぜひお役立てください。


脱毛の主な原因(病気編)

皮膚糸状菌症(真菌感染)

デグーの脱毛でよく見られるのが皮膚糸状菌症です。真菌(カビ)の一種が皮膚や被毛に感染し、円形や不規則に毛が抜けてしまいます。主な症状は円形脱毛フケで、脱毛部位の皮膚が白っぽく粉を吹いたり、赤くなることがあります​。真菌は湿度や温度が高い環境で繁殖しやすいため、日本の高温多湿な気候では注意が必要です。例えば砂浴び場を清潔に保たなかったり、飼育ケージが蒸れやすいと発症しやすくなります。

改善策(真菌症の場合):まずは早めに動物病院で真菌培養検査を受け、原因菌を特定します。治療には抗真菌薬(一般的にイトラコナゾールやケトコナゾールなどの飲み薬・塗り薬)が用いられます。また、ケージ内の環境を清潔に保ち、砂浴び場はこまめに新しい砂に交換しましょう。換気を良くして湿度を下げることも大切です。治療期間は数週間~1か月以上かかる場合がありますので、獣医師の指示に従って根気よく続けましょう。

外部寄生虫(ノミ・ダニなど)

ノミやダニなどの外部寄生虫感染も脱毛の原因になります。ノミが皮膚に寄生すると激しい痒みを引き起こし、患部をかきむしって毛が抜けたり皮膚炎になることがあります。また、身体に寄生しない場合でも、他のペット(猫・犬など)から寄生虫が持ち込まれてデグーに感染する場合があります。寄生虫が原因の場合、皮膚に小さな斑点状の脱毛や赤みが現れることが多く、しばしば激しい掻痒(かゆみ)が伴います。

改善策(寄生虫の場合):毎日の観察で被毛にフケ状の抜け毛や黒い汚れ(ノミの糞)がないかチェックします。寄生虫が疑われる場合は、獣医師に駆虫薬(ノミ・ダニ用スプレーやスポット剤)を処方してもらいましょう​。また、ケージ内や床材もダニの隠れ場所になり得るため、定期的に掃除・消毒し、ノミ・ダニの駆除を行います。寄生虫が原因の皮膚炎では、掻き傷から細菌感染を起こすこともあるので、皮膚がただれてしまった場合は抗生剤処置が必要です。

自己咬傷・毛引き(ストレス性脱毛)

デグーは非常に活発で群れで生活する動物です。ストレスがかかると、自分の毛を噛みちぎったり過剰にグルーミングすることで脱毛してしまうことがあります​。例えば、単独飼育やケージのサイズが小さい、物音が多い、環境の変化(引越しや模様替え)などでストレスが溜まると、前足や脇腹などをなめて毛がツルツルになる場合があります。毛を抜く以外にも、ケージの金網を齧る際に被毛が切れることもあるため、頭部や鼻の上が薄くなることもあります​。

改善策(ストレス性脱毛の場合):デグーのストレスを減らすために生活環境を充実させましょう。具体的には、十分な大きさのケージと隠れ家を用意し、毎日運動できる時間を確保します。自然に近い明暗のサイクル(夜間は暗く、昼間は明るく)を作ることも重要です。広い運動場やトンネル、登り木などをケージ内に設置し、餌を探す工夫(隠れた餌探し)をさせると良いでしょう。また、社交的な動物なので、可能であれば同居できる仲間を迎えることも考えます。食事面でも砂糖が多いおやつは控え、牧草や野菜中心のバランス良い食餌を与えます。ストレス要因を取り除っても脱毛が続く場合は、獣医師に相談して適切な行動療法や投薬を検討する場合もあります。

歯科疾患による影響

デグーは歯が一生伸び続ける動物で、不正咬合などの歯科疾患で口周りにトラブルが起きると脱毛を招くことがあります。不正咬合になると歯が伸びすぎてアゴに傷を作り、よだれが多量に出るようになります。このよだれで首まわりや前肢が常に湿った状態になると、湿疹や脱毛を引き起こします。特に口元や首、前足の付け根などが濡れてハゲている場合は歯が原因かもしれません。

改善策(歯科疾患の場合):定期的に歯をチェックし、不正咬合が疑われれば早めに動物病院へ。重度の場合は全身麻酔で歯を削る処置が必要です​。歯の伸び過ぎを予防するには、牧草(チモシー)をメインに十分に与え、硬い木のかじり棒などで歯を自然に摩耗させてあげることが大切です​。歯科疾患が改善すれば、よだれによる皮膚トラブルも緩和されます。

ホルモンバランスの乱れ・内分泌疾患

生活環境の乱れやストレスでホルモンバランスが崩れると、デグーでも脱毛が起こることがあります。不適切な温度・湿度管理や長時間の強い照明、過度のストレスは自律神経を乱し、内分泌系に影響を与えると考えられています​。ホルモン異常による脱毛では一般に痒みはありませんが、皮膚の色が黒ずむような変化が見られることがあります​。

改善策(ホルモンバランスの場合):まずは飼育環境を整えます。室温は20~25℃、湿度は50%前後を目安に管理しましょう​。高温多湿は真菌や皮膚病を招きやすいのでエアコン・除湿機で調整し、冬は10℃以下にならないよう暖房で保温します。また、明るさは日中と夜間でしっかり区切りをつけ、日没後は薄暗くするか部屋の照明を消しましょう。ストレス要因を減らし、バランスの良い食餌(高繊維で糖分控えめ)を与えることも重要です。ホルモン異常が疑われる場合は血液検査など詳しい診断が必要ですので、早めに獣医師に相談して内分泌疾患(例えば糖尿病など)の検査を受けましょう。

その他の原因:腫瘍やアレルギー、換毛期など

  • 皮膚腫瘍・できもの:皮膚にしこりができると、その周辺の毛が薄くなることがあります。明らかなできものがあれば獣医師に診てもらい、必要なら摘出や細胞診を受けましょう​。

  • アレルギー:デグーでもアレルギー体質の子がいます。床材や乾燥牧草、餌の中の成分などにアレルギーを起こし、皮膚が赤くなったり痒みで脱毛する場合があります。心当たりがあれば、アレルゲン(例えば異なる床材や別のペレット)を取り除いて様子を見ます。

  • 自然換毛:季節の変わり目にはデグーも換毛があります。全身的にゆるやかに毛が抜け替わる程度なら問題ありませんが、局所的な脱毛や明らかな禿げは異常です。

上記以外でも、免疫力低下で様々な感染症が併発することもありますので、原因がはっきりしなかったり症状が悪化する場合は動物病院を受診しましょう。


脱毛の主な原因(環境編)

ストレス・飼育環境

デグーは社交的で好奇心旺盛な動物なので、狭すぎるケージや孤独な飼育は大きなストレスになります。また、騒音やペットの攻撃、見知らぬ人の往来などの刺激もストレスです。ストレス下では体内のホルモンが乱れ、脱毛や体調不良を招きやすくなります​。ストレスによる自傷行為は前述のように自分の毛を噛むなどの形で表れます。

温度・湿度管理

デグーは暑さ・寒さに弱いため、室温管理が重要です。適正温度は**20~25℃**程度とされ、夏はエアコン、冬はヒーターで室温を保ちます​。湿度については50%前後が理想です​。高温多湿下では真菌や雑菌が増えやすく皮膚病の原因となり、高温時には熱中症で体調を崩して被毛が抜けやすくなります​​。反対に湿度が低すぎても皮膚が乾燥しやすいので、加湿器で50%前後に維持すると良いでしょう。夏場は換気と冷房を、冬場は保温と乾燥対策(加湿)を心がけます。

日照・生活リズム

デグーは昼行性なので、1日を通して適度な暗闇と明るさを保つ必要があります。夜も明るいままだとストレスで自律神経が乱れ、脱毛につながることがあります。理想的には昼間12時間・夜12時間の明暗サイクルを作り、夜間はケージ周りの照明を消しましょう。

食事・栄養バランス

肥満や糖分過剰は糖尿病の原因になるだけでなく、皮膚や被毛の健康にも悪影響を与えます​。繊維質が少なく糖分の多いペレットやおやつは控え、牧草を主食にしてビタミン・ミネラルもバランス良く与えます。ビタミンEやビオチンなど皮膚の健康に必要な成分が不足すると脱毛しやすいので、デグー専用フードを使うか獣医師に相談してサプリメントを検討することもあります。

飼育環境の清潔さ

ケージが汚れていると皮膚感染症のリスクが高まります。床材やトイレ砂には尿や排泄物が繁殖源になるカビ・細菌が含まれるので、こまめに交換し清掃しましょう。また、砂浴び場の砂は脱糞するとすぐに交換し、清潔に保つことが大切です。多頭飼育の場合はケンカの傷にも注意し、棲み分けや十分なスペースを確保します。


病院受診のタイミング

次のような場合は、早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします:

  • 脱毛が急激・広範囲に進むとき

  • 脱毛部位に発赤・潰瘍・膿などが見られるとき

  • かゆみがひどく、デグー自身が頻繁にかいているとき

  • 被毛だけでなく、食欲不振や体重減少があるとき

  • その他、傷口から血が止まらなかったり、動物の様子(元気・食欲など)がおかしいと感じたらすぐに診てもらいましょう。

  • 自己判断での対処(環境改善や簡易ケア)で改善が見られない場合も受診を検討してください。

動物病院では皮膚検査(顕微鏡検査・培養検査)、血液検査、寄生虫検査などを行い、原因を突き止めます。その結果に応じて内服薬・外用薬・注射などで治療し、必要があれば外科処置や栄養サポートを行います。早期に正しい治療をすれば完治できる病気も多いので、「いつもと様子が違う」と感じたら早めに相談しましょう。


改善・予防のポイントまとめ

  • 飼育環境の見直し:室温20~25℃、湿度50%前後を保ち、日中は明るく夜間は暗い環境を作る​。十分な広さのケージに隠れ家を設置し、清潔に保ちましょう。

  • 栄養バランスの改善:牧草を主食にして繊維質を十分摂り、砂糖や脂肪分の多いおやつは控えます。必要に応じて皮膚・被毛用サプリメントを獣医に相談します。

  • ストレス対策:運動不足を防ぐため、毎日1時間以上放し飼いできる時間を設けます(ケージ外で遊ばせる)。ケージ内にはトンネルやホイールなどを配置し、知育玩具で飽きさせない工夫を。可能であればデグーの社会性を考慮して仲間を飼育することも効果的です。

  • 砂浴びの継続:被毛の油分を落とし皮膚を清潔に保つために、砂浴び場を常設して定期的に砂浴びさせましょう。砂は定期的に交換し、食べこぼしや排泄物で汚れていないかチェックします。

  • 定期健診と体調観察:毎日のブラッシング・見守りで抜け毛の程度や皮膚の異常を早期発見します。歯のチェックや体重測定も忘れずに。異常があればすぐに動物病院を受診します。

以上のように、病気か環境要因かを切り分けつつ、原因ごとに対策することが重要です。デグーの脱毛は飼育初心者にとって戸惑う症状ですが、落ち着いて原因を調べ、適切に対処すれば健康を取り戻せます。大事なのは日頃からデグーの様子に注意を払い、少しでも異変に気づいたら早めに対応することです。元気な被毛を取り戻し、デグーとの生活を楽しんでくださいね。


参考資料:

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